世界文化遺産:三角西港(みすみにしこう) 熊本・天草旅行(10)
熊本・天草へ家族旅行したときのことを断続的にアップしています。
1日目は熊本城などを観光して美味しい馬肉料理を楽しんで、市内に宿泊。
・熊本城
2日目は天草へ。
その途中で観光地を巡りました。
◆三角西港
宇城市にある世界文化遺産の三角西港(みすみにしこう)に立ち寄りました。
とても穏やかな海に面する港。
対岸は天草諸島の北端、大矢野島。
右手(北)は有明海、左手(南)は不知火海(八代海)に通じた港です。
三角西港は、オランダ人技師ムルドルが設計して1887年(明治20年)に開港した、明治三大築港の1つ。(あと2つは、福井県坂井市の三国港、宮城県東松島市の野蒜港)
(三角西港散策マップ:宇城市役所HP「三角西港おすすめ散策コース」より)
756mにもおよぶ石積みの埠頭や水路、建造物があります。
三池港が開港するまで、三池炭鉱から産出された石炭がここ三角西港から大型蒸気船に積み替えて、中国上海、海外に輸出されたそうです。
2015年に世界文化遺産に登録されました。
テーマは「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼,造船,石炭産業」。
1850年代から1910年の半世紀間に西洋の技術が非西洋へ移転され、造船、製鉄・製鋼、石炭の重工業分野で産業化を成功させた産業遺産群で構成。遺産群の所在地は、熊本県から岩手県までの8県11市にわたっています。
そんな三角西港を少しだけ散策。
宇土市教育委員会作成「三角西港」パンフレット(pdf)の説明などを元に紹介します。
◇石積埠頭
全長756mに及ぶ埠頭は、オランダ人技師ムルドルが設計し、日本人石工の技術で施工した、当時最先端の石積み埠頭。
従来の日本の石積には無かった湾曲がある切石積みです。国重要文化財です。
◇排水路
3面石張りの排水路。
満潮時に海水を引き込み、干潮時に排水するよう造られていて、そこに道路側溝を流す、天然の下水道の役割を果たした。
西端、西、東、後方の4か所が国重要文化財です。
◇旧三角海運倉庫
埠頭のすぐ脇に立つ土蔵造りの建物。
1887年(明治20年)に建てられた荷揚げ倉庫。
1985年に修復された国登録有形文化財です。
そこに2024年6月にオープンした「アマテラス珈琲」があります。⇒Instagram:@amaterasu.coffee
宇城市観光物産協会が指定管理者となり、上天草市の「海鮮家 福伸」などを経営する(有)福伸が運営しています。
◇龍驤館
明治天皇即位50年を記念して1918年(大正7年)に宇土郡教育界が建設し、公会堂や図書館として利用されました。
国登録有形文化財です。
耐震工事中で中に入れなかった。
現在は歴史ガイダンス室として利用されているそうです。
◇ムルドルハウス
港の設計者・オランダ人技師ムルドルにちなんで1990年に建てられた建物。
ここは物産館で、地元の銘菓、季節のフルーツ、海産物の加工品などがあるみたい。オリジナルトートバッグの「三角カバン」が人気らしい。
でも残念ながら11時のオープン前で、中に入れなかった。
◇旧高田回漕店
明治20年代に建てられた、荷物・乗客を扱う回船問屋の建物で、1998年に修復。
「回漕(廻漕)」とは船を使って運送すること。
内部を見学できるのですが、今回はパス。
◇浦島屋
3月まで耐震工事中。
こんな姿をしています。
文豪・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が立ち寄った旅館で、小泉の「夏の日の夢」に登場する。
大浦天主堂やグラバー邸を設計した小山秀之の設計だと推測されていて、当時の写真をもとに復元したもの。
当時の建物は、現在、龍驤館が建っている場所にありましたが、1904年(明治34年)に国に売却され、中国の大連に移築、その後、消失したとのこと。
小泉八雲が滞在したのは1893年(明治26年)7月。
熊本五高の教師として赴任していたハーンが、長崎へ赴いた帰り、海路で熊本へ戻るとき、深夜に港に到着して旅館に宿泊した。ハーンは、美しい女将・芳に魅了され、宿の屋号が「浦島屋」であることを知って、浦島太郎の昔話に重ねた「夏の日の夢」という作品を創作した。
作品の中でハーンは、「その宿屋は、私にとっては極楽、そこの女中達は天女のように思われた。」「浴衣を着て、涼しい畳の上に楽々と座ってよい声の女中達にかしずかれて、綺麗な物に取り囲まれているのは、十九世紀のすべての悲しみの償いのようであった。」と書いている。
そして女主人については、「彼女はとても若くて、歌川国貞の「胡蝶こちょうの美女」や「青蛾せいがの娘
図むすめず」を思わせて、うっとりする、とても愛想の良い人だった。」「彼女の音楽を奏かなでるような声は過ぎ去ったが、私には――霊的な網で、ぞくぞくするような――魔法がすっぽりと掛けられた気がした。」「妖精のような女主人」と絶賛している。
ここの1階に「カフェギャラリー・ラフカディオ」があったのですが、現在はありません。
ところが、そのカフェの経営者が古民家カフェを新たにオープンしています。
そうとは知らずに、この後で訪れました。それはまた明日の記事で。
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